海の生物は異種間で相手を利用したり相手に利用されたりする関係を「共生」と言う。
中でもお互いに利益があるものを「相利共生」、どちらか一方が利益があるものを「片利共生」と言う。
ホンソメワケベラの幼魚にクリーニングされるアカエソ。体長約20cm  相利共生。
ホンソメワケベラは魚類についた寄生虫を食べる。アカエソは口やエラ蓋を開いて掃除しやすくして寄生虫を取り除いてもらう。
ホンソメワケベラのいるところにはたくさんの魚が寄ってくる。クリーニング店は大繁盛である。井田 水深10m
ホンソメワケベラにクリーニングされるオオモンハタ。体長約50cm  相利共生。
掃除しやすい様に鰭が全て全開。超広角レンズ前ギリギリまで接近して撮影。富戸 水深17m
ベニヒモイソギンチャクを背負ったソメンヤドカリ。体長約3cm  相利共生。
ソメンヤドカリは自分の背負っている貝殻にベニヒモイソギンチャクを器用にくっつける。ベニヒモイソギンチャクは槍糸とよばれる攻撃用の刺胞が密に配置された糸状の器官を持っていて、槍糸は敵におそわれると体内から放出され相手にまとわりつく。都合の良い武器を背負っているのである。
イソギンチャクは自ら移動しなくともソメンヤドカリの餌のおこぼれをいただくことが出来るのでこれもまた好都合である。高知県柏島 水深10m
シライトイソギンチャクで暮らすクマノミのカップル。体長約5cm  相利共生。
クマノミはイソギンチャクの触手の刺胞毒に守られて身の安全を確保できる。クマノミは刺胞毒の免疫性を徐々に獲得する。
イソギンチャクはクマノミの餌のおこぼれにあずかれる。餌を運んでくれるのはありがたいのである。
沖縄島真栄田岬 水深10m
スナイソギンチャクで暮らすアキノハマカクレエビ。体長約3cm  井田 水深43m
スナイソギンチャクの触手の胞子毒は強烈で身を守るには安全極まりない。
スナイソギンチャクにはそれほどのメリットが無いと言われていて片利共生の関係とされている。
スナイソギンチャクに暮らすバルスイバラモエビ。体長約2cm   片利共生。八幡野 水深30m
ナガレハナサンゴに共生するヒメイソギンチャクエビ。体長約1.5cm   片利共生。高知県柏島 水深20m
ミズタマサンゴに共生するバブルコーラルシュリンプ。体長約2cm   片利共生。沖縄島真栄田岬 水深18m
ハナウミシダに共生するコマチッテポウエビ。体長約2cm   ハナウミシダに隠れて餌のおこぼれをもらう片利共生。
ハナウミシダの口盤付近に隠れていたが撮影を始めるとこの大きなズングリした体でハナウミシダの中を逃げ惑いハナウミシダの裏側に逃げた。
ハナウミシダは岩などにつかまる巻枝がほとんど無く、腕とその先の羽枝で踏ん張る様に岩に固着している。
この隙間を狙って細長い超深度レンズを突っ込んで撮影した。
ハナウミシダは羽根の様な腕が100本以上も有り、大きい体のコマチテッポウエビは隠れ易いのだ。
沖縄県名護市沖 水深8m
リュウキュウウミシダに共生するコマチコシオリエビ、甲幅約1cm。片利共生。
沖縄県名護市沖 水深8m
名前にはエビが付くがウミシダ類に共生している異尾類で、ヤドカリやタラバガニの仲間。
ウミシダが岩などに固着する際に使う巻枝にペアでいる。羽根の様な腕の付け根の裏側。
写真を撮影する際はウミシダを岩から剥がして逆さまにしないと不可能。
無理に剥がそうとすると羽枝の腕が千切れる。生物にダメージを与える撮影は邪道。
このリュウキュウウミシダは大型のウミシダで巻枝も大きく、しかも潮通しの良い岩礁の頂部にいた。
岩礁と巻枝の隙間に細長い超深度レンズを突っ込んで撮影した。
特殊なレンズだからウミシダに触れる事なく撮影でき本来の生息環境を取り込んだ写真を撮ることができた。
ニクイロクダヤギ に共生するヨツバネジレカニダマシ。甲幅約5mm   井田 水深23m
刺胞動物であるニクイロクダヤギは刺胞という特殊な器官を持つ。これは餌生物や外敵による刺激に反応して相手に毒を注入する微細で精巧な自動注射器である。
ヨツバネジレカニダマシは安全な住まいとして利用している。片利共生。
ニシキウミウシに共生するウミウシカクレエビ。体長約1.5cm   富戸 水深15m
毒々しい色彩で「標識的擬態」をしているニシキウミウシは安全な住まいで移動までしてくれて餌にありつける効率は高くなる。片利共生。
イボベッコウタマガイに住むウミウシカクレエビ。体長約1.5cm   片利共生。富戸 水深18m


相手に害を与える場合を「寄生」とするが、これはよほど良く観察しないとわからないことが多い。 以下は「寄生」と呼ばれている関係である。
オワンクラゲに寄生するオオトガリズキンウミノミ。傘の直径約10cm   井田 水深7m
オワンクラゲの体表に乗っているのが3個体、うち1個体は子どもであろう。寄生してオワンクラゲの餌のおこぼれをいただいたり、オワンクラゲを食べたりする。
オワンクラゲの生殖腺が、外周を縁取るリングのように緑色に発光している。
下村脩氏が2008年に「GFPの発見と応用」でノーベル化学賞を受賞された。GFPというのは、緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein)、つまり緑色に光るタンパク質でオワンクラゲという光るクラゲからGFPを発見した。
センナリウミヒドラに寄生するサクラミノウミウシガーベラミノウミウシスミゾメミノウミウシが産卵。体長約3cm
伊豆海洋公園 水深34m
センナリウミヒドラはこれらのウミウシの餌となり、産卵場所としても利用される。
ツリフネキヌヅツミガイトゲナシヤギに産卵。体長約4cm   井田 水深25m
キヌヅツミガイの仲間はヤギ類に寄生しその共肉を食べる。また、ヤギの枝部分に産卵する。
ヤギに寄生するウスアカイソギンチャク。直径約3cm   伊豆海洋公園 水深45m
潮当たりの良いヤギ類の枝部に寄生しヤギと同じくプランクトンを効率良く餌にしている。
ヤギ類に寄生して分裂を繰り返して増殖し全て侵略したウスアカイソギンチャクの個体群。
イイジマフクロウニに寄生するゼブラガニ。甲幅約1cm   八幡野 水深22m
猛毒のイイジマフクロウニに寄生して保身し、しかもその棘や管足を刈り取って食べてしまう。
イイジマフクロウニに寄生するイイジマフクロウニヤドリニナ。体長約1cm   井田 水深8m
猛毒針の間で安全な生活を約束されている。宿主の中で産卵もする。
トゲトサカに寄生するテンロクケボリタカラガイ。体長約1cm   井田 水深20m
美しい外套膜で覆われているが、貝殻そのものは薄桃色。
外套膜は貝殻の保護をしているが、トゲトサカのポリプに似てカモフラージュの役目もしている。
テンロクケボリタカラガイはポリプを捕食し産卵もここで行う。