「やんばる」とは、漢字で「山原」と書き、沖縄島北部の山々が連なり森が広がるエリア。
やんばる3村(国頭村・大宜味村・東村)は、2016年9月15日に環境省より「やんばる国立公園」に指定され、
2021年7月26日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会にて、世界自然遺産に登録された。
山岳地帯には無数の沢筋が網の目のように存在し、多くの渓流や淵、滝を作り、潤いある豊かな亜熱帯の森を作っている。
固有種や絶滅危惧種などの貴重な生物が棲息している。
やんばるの南限に関しては生物学的に各分野で相違があるようだが、私は大浦湾と名護湾を結ぶ国道329号線付近から北を撮影対象としている。


スダジイオキナワウラジロガシの2種が全体の6割を占める照葉樹林

林道は全て狭く、渓流にアクセスし易い駐車スペースは極めて少ない

渓流を取り巻く環境は様々であるが、源流〜上流は鬱蒼とした森の中が多く危険生物にも注意が必要。
上流〜中流域に近づくにつれて日照が期待できる渓流も有る。

リュウキュウハグロトンボ(雄) 背景には巨大なシダ植物・ヒカゲヘゴ
沖縄・やんばるの渓谷の宝石 とも呼ばれているとても美しいトンボ。本土のアオハダトンボにも似ている。

水中から近づくと至近距離まで寄って撮影できる


オオウナギ 体長約1m
熱帯産のウナギ類で奄美大島以南の琉球列島に多く棲息する。
日本国内に生息するウナギ科魚類はニホンウナギとこのオオウナギの二種のみで、ニホンウナギの大型化した「大ウナギ」とはまったくの別種。
最大約2m、体重20kgに達する。


クロヨシノボリ(雄) 体長約5cm
ヨシノボリの仲間は体型や体長はほぼ同じ。色彩や模様の入り方で種が分かれる。

クロヨシノボリ(雌) 体長約4cm


シマヨシノボリ(雄) 体長約4cm
本土でも観察できるヨシノボリ属であるが南方産は斑紋の色が濃い。
ほほに赤色のミミズ状の細長い斑紋、胸びれに三日月状の斑紋が2〜3個あるのが特徴。

シマヨシノボリ(雌、抱卵) 体長約4cm


キバラヨシノボリ 体長約4cm RDB絶滅危惧ⅠB類(CR)
やんばるの渓流の奥深い源流域にキバラヨシノボリを撮影に行った。深い谷を降りて行くのだがそこは登山道よろしく急勾配に木の根が張り出しており、滑り易い粘土質の部分もある。
足元に細心の注意を払い100m程降りて行く。普通の観察ツアーではちょっと考えられないルート、研究者や自然カメラマン、パトロール員しか降りて来ないだろう。
目的のキバラヨシノボリに出会えた。
キバラヨシノボリはクロヨシノボリの陸封型。見た目は殆ど同じであり雌の腹部が黄色いだけ。またこれは繁殖期に色味が増す。
落差の大きな滝の上流にのみ生息し、各河川での滝下のクロヨシノボリが平行進化したもの。
重い水中カメラ2台を持ってのトレッキングも何故か軽い足取りの帰路であった。
林道から降りて行く際に、林内パトロール員に出会ったので挨拶を交わした。
違法な密猟・盗掘・盗採を見かけたら是非通報してくださいと言われた。
ネットでよく、〇〇〇〇(生物の名前)沖縄やんばる産 などとして販売されている。
そんな輩が後を立たない様だ。


アオバラヨシノボリ(雄)
沖縄本島北部・やんばるの固有種。RDB絶滅危惧ⅠA類(CR)
近似種のキバラヨシノボリと同じ中卵型のヨシノボリ。比較的大きな卵を少数産み孵化した仔魚は降海せずに淡水域のみで成長する純淡水魚。
体長約4cmと小ぶりながら成魚、透明感ある上品な姿は長時間観察していても飽きなかった。

アオバラヨシノボリ(雌) 体長約4cm


ゴクラクハゼ 体長約5cm
ゴクラクハゼは、ハゼ科ハゼ亜科ヨシノボリ属で、眼の直後までウロコがある事で他のヨシノボリたちと見分けられる。